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アーカイブ サンデー毎日 倉重篤郎のニュース最前線 2025/08/31 重 篤郎
倉重篤郎のニュース最前線 「石破続投」の可能性 「裏金問題」を追及し、自民党の蘇生を
石破茂首相の進退が依然、政治動向のカギとして注目されている。支持率は上がっているが、党内の否定論も根強い。続投の可能性はどのくらいあるのか? 「有事」対応は? 物価高対策は? 党内闘争は? 4人の論者が論じ尽くす――。
石破茂首相進退政局第2弾。前号では、この政局は世論の石破支持と自民党内の石破おろしの綱引きがポイントであること、世論の追い風が吹くことによって、石破氏の政権基盤が強化されていく構造と、石破支持率がじわり上がる傾向にあることを指摘、石破擁護派の4氏(船田元、鈴木宗男、田中優子、中森明夫)にその論を展開して頂いた。
この号はさらに踏み込んで、いまなぜ石破続投なのか。その大義は何か? 石破氏に逆風を乗り切る精神的パワーは残っているのか? 続投の実現可能性はどこまであるのか? の3点を詰める。
まずは大義はあるや否や。石破氏は続投表明した際の理由として、トランプ関税、物価高対応、大地震対応、日本を取り巻く厳しく複雑な安全保障環境を挙げ、国政に停滞を招くべきではないと強調した。ただ、これは誰が首相になっても向き合わざるを得ない共通課題であり、石破氏続投でしか解決し得ないものとも言えない。むしろ、居座ることによる混乱が政治空白を招くとも反論されかねない。石破オリジナルの続投の必然性をどう位置付けるか、ここが重要になる。
石破氏の心のありようも無視できない。7月23日の歴代総裁との会見では麻生太郎氏が続投に否定的考えを伝えた、と言われ、28日の両院議員懇談会は、64人が発言、退陣を迫る声が7割あり、また8月10日の両院議員総会では35人が手を挙げ、総裁選前倒し論が噴出した、という。自民党分裂回避のため、もしくは有終の美を飾るため、自ら身を引くべきだとの説得攻勢もあった。離党、復党、5度の総裁選に耐え抜いたタフな人物ではあるものの、いつまで続くかわからないこの党内圧力をどう乗り切るかも、政局の勝敗を決するものとなろう。過去事例を見る限り、進退問題は弱音を吐いた所から綻(ほころ)びる。
今後の政局の流れをどう見るか。10日の両院議員総会で総裁選前倒し(石破リコール)問題は、総裁選管理委員会に一任され、同委は19日会合を開き、逢沢一郎委員長は、前倒しの意向確認は記名式を採用する方針を明らかにした。前倒しには党国会議員295人と、都道府県連代表者47人の総数の過半数、172人の要求が必要とされており、石破おろし側にとってみると、記名による正面切った執行部批判票をそこまで集められるかどうか、一つのハードルになりそうだ。
前号で取り上げた石破政権支持率上昇も含め、政局の全体状況は石破氏への追い風となっている。外交日程も石破カラーを発揮できる場として活用できそうだ。20~22日に石破氏が議長を務めるアフリカ開発会議(TICAD)が横浜で開かれ、23~24日は韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が来日、29日にはインドのモディ首相との首脳会談が調整されている。
ただ、政局というのは一寸先が闇である。先の3点について、政局ウオッチャー3氏に補足いただく。元自民党副総裁の山崎拓、ジャーナリストの田原総一朗、元経産官僚の古賀茂明氏だ。山崎氏は、石破政権誕生劇の「産婆」役であると同時に、政局の指南役、田原氏は、石破氏とは政治改革の頃からの付き合いであり、古賀氏は、石破シンパでありながら手厳しく注文する人である。アンチ自民の金子勝慶大名誉教授には、むしろ石破政権は政策的に大きな得点を挙げる好機にある、という意外な応援歌を別項で頂いた。
「2027年問題への対応だ。27年は中国が台湾に侵攻すると言われている年だ。人民解放軍の建軍100周年と、習近平が4期目を迎えるタイミングだ。問題は麻生太郎氏ら自民有力者の中で『台湾有事は日本有事だ』と煽(あお)り、台湾有事が起これば自衛隊が防衛出動するかのように主張している人たちがいることだ。だが、仮に中国が台湾に侵攻しても日本が直接武力を受けたわけではないので自衛隊は出動できないし、集団的自衛権の発動といっても、日中間の取り決め、文書で台湾を国として認めていないのが実態だ」
「米軍が台湾を守るために在日米軍基地から出動すると、中国は必ず米軍基地にミサイルを撃ち込む。日本の領土である米軍基地が攻撃されれば日本が攻撃されたのと同じなので、日本は自衛権を行使、中国との戦争に突入する。台湾有事が日本有事を誘発したことになる。だが、中国との戦争は日本に壊滅的打撃を与える。何が何でもこれを避ける。それが当面の日本の最大の安全保障問題だ」
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