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アーカイブ サンデー毎日 倉重篤郎のニュース最前線 2025/03/08 倉重 篤郎
石破・トランプ時代の世界戦略 「全体知」の思索者、寺島実郎が読み解く時代のカギ
首脳会談はなぜ成功したか/デジタル・金融複合体という米国新体制/米中関係にパラダイム変化
日米首脳会談成功の背後に、米国のアジアへの戦略を読み込む「全体知の思索者」寺島実郎氏が、「石破首相・トランプ大統領」時代のあり得べき世界認識を構想する。日本は米中とどう向き合うべきか? 日本経済再興への道は? 時代の全景を見透す必読インタビュー。
1920年代戦間期との類似性/今は日本の民主主義の正念場
米国第34代大統領アイゼンハワーの退任演説は歴史に残るものだった。
彼はその中で、米国が直面する新たな脅威として、多大な雇用を生み巨大産業化しつつあった軍事産業が、米経済にビルトインされたことを挙げ、これを軍産複合体と命名、「間違った権力が破滅的に台頭しつつあり、これからも続くだろう」と警鐘を鳴らした。
その後の米国の歩みを見ると、朝鮮戦争からウクライナ戦争に至るまで、いかにこの元将軍でもあった人物の見立てが正鵠(せいこく)を射ていたかが、伝わってくる。戦争なしに米国経済は成り立たないのである。世界政治の頂点を極めた人が権力の座を去る時のメッセージの重さを改めて感じる。
トランプ2・0時代に入り、動静も伝えられなくなった第46代大統領バイデンも実は重要な予言をしていた。1月15日の退任演説で、アイゼンハワーの「軍産複合体」を引用、「テック産業複合体の台頭を懸念している。それは米国に現実的な危険をもたらすおそれがある。米国の人々は、権力の乱用を可能にする誤情報や偽情報の雪崩に埋もれつつある」と述べたのだ。
これを苦笑いして見ていた人がいる。寺島実郎氏(日本総合研究所会長、多摩大学長)である。氏は毎月放映するMXテレビ「寺島実郎の世界を知る力」の昨年12月の放送で、発足に向けて動いていたトランプ第2期政権の性格について、これまたアイゼンハワー演説を引用し「デジタル・金融複合体」と言い切っていたからである。
イーロン・マスクらビッグテックの大立者たちがトランプ周辺に蝟集(いしゅう)する姿を見るに、テック(デジタル)複合体とは言い得て妙ではなかろうか。
寺島氏と言えば、『21世紀未来圏 日本再生の構想』(岩波書店、2024年5月)を出版、日米関係の再設計の必要性を主張する「全体知」の識者だ。石破茂首相がこれを熟読玩味(がんみ)している、という話は以前紹介したが、首相動静を見ると、石破氏は、訪米帰国後に寺島氏と1時間40分面談しており(2月15日)、それだけでも政権への影響力は推して知るべしだ。トランプvs.石破時代の世界戦略をどう考えるべきか。寺島氏を直撃した。
まずは足元の国会情勢から聞く。予算修正めぐる日々の与野党攻防どう見る?
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