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アーカイブ フェロー・早田 秀人 エッセイ「思索の散歩道」 2024/09/02
SDGsの高まりを背景に「フェアトレードラベル運動」が注目を集めています。
劣悪な労働条件の中で生産された安価な商品や製品の輸入を防ぎ認証をおこなうことで売る側、買う側双方の利益が確保されますが、認証商品・製品を購入することによって開発途上国の多くの生産者をサポートすることになります。
国際フェアトレード基準は、世界の貿易構造で不利な立場におかれた生産者にとって、より公平・公正な取引条件を促進することを目指し、国民一人当たりの収入レベルや経済格差、そのほか経済的・社会的な要素を考慮して、どの国、地域の生産者を認証の対象とするか方針を定めています。
方針策定に当たっては①DAC(OECD開発援助委員会)およびODA(政府開発援助)の受取国・地域、②世界銀行のジニ係数により、所得や消費の分配における不平等など国内経済格差を測定、③人間開発指数など、3つの指針をベースに検討されていますが、主に開発途上国と呼ばれている国々が生産国としての認証対象となっています。
フェアトレードの必要性についてコーヒーを事例として考えてみます。コーヒーの主要生産国の殆どが開発途上国です。コーヒー豆の買い取り価格は、生産現場とは遠く離れたニューヨークとロンドンの国際市場で決められます。国際市場は投機マネーも流入するため、高騰したり暴落したり価格は乱高下します。マーケット動向の情報入手や市場への販売手段をもたない個々の小規模農家の多くが、中間業者に頼らざるを得ない状況にあり、時には生活に十分な利益を得られず不安定な生活を余儀なくされることもがあります。
日本では途上国で生産された日用品や食料品等が、驚くほど安い価格で販売されることがあります。一方生産国ではその安さを生み出すため正当な対価が生産者に支払われなかったり、生産性を上げるため必要以上の農薬が使用され環境が破壊されたり、生産する人の健康に害を及ぼしたりといった事態が起こっています。
国際フェアトレード基準では、生産者の持続可能な生産と生活を支えるために必要とされる「フェアトレード最低価格」を定めています。国際市場価格が予想を超えて、下落しても、輸入業者は生産者組合に対して「フェアトレード最低価格」以上を保証しなければなりません。一方、国際労働基準の設定はILO(国際労働機関)の設立当初からの重要な任務となっており、総会で通常2回の審議を経て、基準が採択されることになっています。
国際労働基準には、条約(労働条件等について一定の基準を定め、これを批准した国についてその実施義務が発生する文書)と、勧告(一定の基準を目標として掲げている文書で、批准という行為を伴わず、法的拘束力は生じない)という2つの形式があります。
ILOは2019年7月までに190の条約と206の勧告を採択しています。内訳は労働条件、労働安全衛生、労使関係、雇用、職業訓練、社会保障、船員関係など労働社会問題全般に及んでいます。
フェアトレードの精神を国際的に浸透させるためには、フェアトレード・ジャパンなど、“民間の善意と努力”に委ねるだけでなく、政府が先頭に立って国際的に弱い立場にある開発途上国の生産者や労働者の生活改善や彼らが自立できるよう原料や製品を適正な価格でしかも継続的な購入を行えるよう国際ルールを定着させるための努力を惜しまないことが求められます。因みにフェアトレード認証製品には例にあげたコーヒー豆以外にも砂糖やチョコレートの原料となるカカオやバナナ、ジャム、蜂蜜、ワイン、ごま、大豆など食料品のほか切り花、綿製品ほか各種ブランド等があります。
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