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    アーカイブ フェロー・早田 秀人 エッセイ「思索の散歩道」 2025/02/15
    エッセイ「思索の散歩道」
    すべては波動から成り立っている
     「波」は水、空気、固体それに空間などを“媒体“として四方八方へ伝播します。
     エネルギー、光、重力は波となって空間を伝わり、その過程で反射、屈折、回折、共鳴などの現象を伴い「増幅」、「減衰」繰り返します。そして「波」はある空間に閉じ込められると共鳴し、定在波となって安定します。
     「量子で読みとく生命、宇宙、時間」(吉田伸夫著、幻冬舎)によれば「物理現象の根底には微細な波がある。量子効果とは、根底に存在する波動の特性が表面化することだ。さらに、タンパク質のように巨大分子になると、原子核の配置が少し変わるだけで、さまざまな共鳴パターンが現れる。あらゆる物理現象の根底には直接観測するのが困難なほど微細な波動が存在する。また、“場の量子論”によると、空間は、何もない空っぽのスペースでなく、すべての地点が振動可能な実体である。すべての物理現象の根底には“場の波動”があり、それぞれの場には、いわば専用の空間がありその内部に“場の波動”が閉じ込められて定在波を形作る」ことになります。
     アインシュタインは、「光とはエネルギーの塊が集まったもの」とした上で、この塊に対し“エネルギー量子”とか“光量子”と名付けました。
     場の量子論によれば、「量子効果とは、すべての地点が振動可能な実体で満たされている空間の波動の特性が表面化すること」になります。
     砂浜に立ち海を眺めると、波が海洋で大気と海面の境界で風により生起し、海岸に打ち寄せます。一方、港に達し侵入すると、防波堤を通って港の岸壁などで囲まれた空間に閉じ込められます。進入した波は先に到達し岸壁で反転する波と重なり共鳴、定在波となって、留まり振動を繰り返します。この現象は波がある空間に閉じ込められて定在波になる過程の量子論の実物モデルと言ってもよいでしょう。
     波をさらに拡大すると、東日本大震災で恐ろしい体験をすることになった津波となります。津波は当に波動そのものです。
     津波は、波の山と山、谷と谷の長さである波長が途轍もなく長く、海洋にあっては波とは感じられませんが、伝播する速度は、水深5,000㍍では時速800㌔㍍、水深500㍍で時速250㌔㍍、水深50㍍でも時速が80㌔㍍を超える速度で伝わります。
     地球表面は、土・石・岩・水など無機物質が太陽エネルギーを受け、気象変化の影響をにより、森林、草原、砂漠などさまざまな地勢を形成し、生命を生み育んでいます。総ての生命体は細胞から成り立っています。分子生物学を引き合いに出すまでもなく、細胞は分子、その構成体である原子さらに量子の波動運動に支配されています。あらゆる物質や生命が安定して存在するのも物質を構成する分子、原子、微粒子など各レベルの構成体が細胞膜などの閉じられた空間内で定在波の状態になっています。
     私たちは食物摂取と排泄、呼吸・吸排気による生理、勤労、運動、芸術などにより毎日の生活を豊かにし、生命を維持するためになくてはならない様々な活動を続けて行います。
     生命の活動を正常に維持するための“生理装置”は人体で言えば神経系、血液・リンパ系、免疫系などで成り立っていますが、神経系は微弱電流、血液は流体、免疫系は細胞小体内流体などの波動現象に支配されていると言えなくもありません。
     身体外の働きを例にとると、体重は重力波、外界から5感で受ける刺激は音波や光波など外部から「波」を受けとり体内への伝播によって外部から受ける「波」と共鳴、増幅したり減衰したりして身体機能を働かせると同時に、脳内の知覚作用によって感覚を得て、感情や意識が形成され、日常生活ならしめています。私たちは「波」で満たされた空間で生活しているとも言えるでしょう。
     付言すると、日々の生活に欠かすことができない時間は、ごく最近までは地球の公転・自転をベースに定められていましたが、1967年の国際度量衡総会で「1秒はセシウム133原子の基底状態の2つの超微細準位間の遷移に対する放射の9,192,631,770周期の継続時間」と定められ、現在もこの定義が用いられています(国立研究開発法人・情報通信研究機構)
     ところで、月の引力は地球に伝播し「潮汐」という“形”を通して私たちにとって身近なものとなっています。また、「サンゴの産卵は満月に起こる」とか、人間に関係する事例として「女性の生理周期と月の満ち欠け」が遠く離れた空間を超えて影響していると考えられています。
     私たちが「場の量子論」を五感で感じ、心地良い空間を感得できる“場”の具体例としてパワー(スペクトル密度)が周波数 f に反比例する「1/fゆらぎ」をあげることができます。生体のリズムは「1/fゆらぎ」をしており、私たちは音や光の空間に身をおき五感を通して外界から「1/fゆらぎ」を感知すると生体リズムと共鳴し自律神経が整えられ、精神が安定、活力が湧くことから“快適性”と深く関係することが明らかになっています。
     ところで、私たちは木々の葉音、川のせせらぎ、鳥や虫たちの鳴き声はじめ焚き火の炎や木漏れ日や月・星の輝きなど、音や光が織りなす空間に囲まれ「1/fゆらぎ」の中に身をおき「生」を謳歌しています。
     蛇足になりますが生活に欠かすことができない時間は、ごく最近まで地球の公転・自転を基に定められていました。しかし、1967年の国際度量衡総会(CGPM)で、「1秒は、セシウム133 原子の基底状態の2つの超微細準位間の遷移に対応する放射の9,192,631,770周期の継続時間」と定められ、現在もこの定義が用いられています(国立研究開発法人・情報通信研究機構)。
     ところで、俳句は「量子の世界」と響きあっていると断言してもよいと思います。
     高浜虚子が唱えた俳句の凝縮系「花鳥諷詠」は「波の世界」そのものの簡潔な表現です。花の形・色合い、匂い、鳥など目に触れる生き物から発せられ雰囲気、自然の温かみ、厳しさは振動数・振幅・波長など無数の波形が組み合わされ波の複雑合成形といえます。
     俳聖・芭蕉の名句「古池や、蛙飛び込む水の音」の解釈について、早稲田大学教育学部教授、堀切実さんは「門人が書いた『葛の松原』の記述によれば、実際にこの句を作った時の芭蕉の気持ちは、次のように受け取ることができます。水がぬるむようになってきた春の一日の昼下がり、冬眠から覚めたばかりの蛙が、微かな水音をたてて、ときおり池に飛び込んでいて、その水音が伝わってくる。その春の一日のひじょうにのんびりした時間の流れといいましょうか、そこに芭蕉は永遠の時の流れを感じ取ったのだと思います。これがおそらく、作者の側からみたこの句の正解だろうと思うのです。そして、この句は作者の主観というものを抑えて、対象のありのままの風景を描きながら、音の風景を見事にひとつのイメージとして捉えていることになります。この句によって芭蕉は自分の進むべき道を開眼したと見てよいでしょう(「俳聖芭蕉像はどのようにして形成されたか」1999年3月13日早稲田大学総合学術情報センター、オープンカレッジ招待講座)」。
     これら複雑に絡み合うさまざまな位相の波動が私たちの持っている脳の波動と共鳴することによって、感性を呼び起こし、気持ちを高揚させ「場」に落ち着かせるのです。
     一般論として、絵画や音楽、彫刻など様々な芸術作品が、私たちの感性を喚起するのは俳句と同様の仕組みによるものだと言えます。
     葛飾北斎の富嶽三十六景の一つ「神奈川沖浪裏」は「荒れた海に浮かぶ三隻の舟と舟にしがみつく人たち、それを翻弄する手のような形の大波、波間の奥にそびえる富士山などなど。「見た人を圧倒するダイナミックな波の描写は、国内だけでなく海外でも『ビッグウェーブ』や『グレートウェーブ』と呼ばれるほど有名です。この迫力満点の絵の秘密は、北斎が独自に編み出した上下左右を3分割する透視図法である『三つ割り法』を利用することにより遠近感が増し、迫ってくるような波を表現できています。また、波に呑み込まれている舟は、近海で獲れた海産物を江戸に運ぶ高速艇「押送船(おしおくりぶね)」だといわれています」(「ワゴコロ」サイト)」。
     この絵の当に崩れんとする波頭の形は、先進技術で作られた高速度カメラで撮ったものと酷似しています。瞬間をとらえた天才画家の鋭い観察眼が、一瞬の感性を閃かせ後世に残る作品を創り出したのでしょう。
     “造形技術の世界”で波動が原因で落橋した有名な「つり橋」があります。
     「1940年11月7日、米国ワシントン州タコマキトサップ半島ピュージェット湾口に架けられた『タコマナローズ橋』は、同年7月に開通してからわずか4カ月後、しかも風速19m/secの風によってねじれ振動が生じ、その振幅が増大してケーブルが破断され、遂には落下してしまいました。設計では風速60m/secまで耐えられるはずでした。この事故には風と橋の共振が関係しています。風が吹くことで橋の周りに渦ができ、その渦から生じた周期的な力とタコマ橋のねじれ振動が共振(渦励振)を起こしてしまったのです」(大阪教育大学サイト)。
     この事故から得られた教訓は本州四国連絡橋の瀬戸大橋(中央径間1100m)はじめ世界有数の明石海峡大橋(中央径間1991m)など長大吊り橋の設計に活かされています。
     さらに、日常の生活では実感しにくい大スケールの波動現象があります。長期で変動する気候、黒潮や偏西風の蛇行、はたまた海洋の表層と深層を結ぶ塩熱循環といわれる全球的な循環(海洋深層循環)です。これが「ブロッカーのコンベヤーベルト」と呼ばれるものです。「北大西洋高緯度域では表層から深層に海水が沈み込み、沈み込んだ海水は深層で南向きに押し流され、世界中をめぐる間に上昇しながら表層に戻され、再び北大西洋高緯度域の沈み込み域に向かいます。海洋深層循環は、黒潮や親潮などの海流に比べると非常にゆっくりしたもので、循環が一周するのに1000年~2000年の時間を要します」(名古屋大学、宇宙地球環境研究所)。この海洋コンベアーベルトは、太陽エネルギーによる熱供給と海水の塩分との塩熱循環といわなる地球の自転と相関して変化する波動運動と言えます。
     私たちは、時間と空間を通して存在を知ることができる「さまざまな様相の波動」に満ちた空間で生活しています。「波動の場」にいることを意識しながら自然と対話することによって、感性を得かつ磨かれることになります。かくして、私たちはより豊かな人生を送ることができるようになると言っても過言ではないと思います。



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