|
アーカイブ フェロー・早田 秀人 エッセイ「思索の散歩道」 2026/01/31
東京は、多くの人々を惹きつける魅力にあふれた世界に冠たる大都市です。政治・経済・社会面における国の機能が極度に集中しているほか、豊かな市民生活に不可欠な教育・医療・芸術、およびスポーツなどの多くの施設・機能は圧倒的に充実しています。
東京都は、国からの地方交付金を受けていない唯一の地方公共団体で、財政面おいても、国から独立していると言えます。
もちろん、ニューヨーク、ロンドン、パリ、北京、モスクワなど世界の代表的大都市も国や市民生活に欠かせない機能は東京に勝るとも劣らないものがあります。
米ビジネス誌「CEOWORLD」が発表した2025年版「世界で最も裕福な都市」ランキングで、東京が米ニューヨークを抑えてトップになりました。東京のGDPは2.55兆ドルに達し、数十年にわたる技術革新の成果が東京の経済力の基盤になっていると、同誌は分析しています。都市の豊かさは単に人口規模や物理的なインフラ整備だけではなく、「イノベーションの密度、制度の強靱さ、資本の流動性」を反映するものだと、同誌は年次報告書の中で述べ、「東京は今なお、業務遂行の精度、技術の洗練度、そして規律ある経済的なガバナンスの面で、他都市の指標であり続けている。日本の首都は、革新性とインフラの融合において群を抜いており、交通システム、金融ネットワーク、産業サプライチェーンは比類なき精度で機能している」と記しています(ロバート・バーセル、ジョン・フェン記)。
一方で、スイス再保険会社のリー社は、地震と暴風雨、高潮、津波、河川の氾濫という 5つの危険について、世界616カ所の都市部が壊滅的な被害を受けるリスクを評価し、アジアの都市はそのリスクが最も大きく、中でも、特に甚大な被害が予想されるのは東京で「あらゆる危険を 考慮した場合、世界の都市部で最も自然災害の危険にさらされている」 と分析しています。
自然災害とは別に、わが国はエネルギー・食料・工業原材料などの多くを輸入、運搬を海上輸送に頼っており、石油・天然ガスの主要な輸入先である中東で国際紛争が発生すれば、国民生活は多大な影響を受けます。
東京がこのような脆弱な状況にあるにも拘わらず、政府の取り組みは現状に甘んじ切迫感に欠けています。ましてや、国民の多くは危機感に乏しいのが現状です。我が国の社会全体が「東京の一極集中」の脆弱性に晒されているといっても過言ではありません。
「東京の一極集中」を早急かつ計画的に是正していかなければ、国の安全保障ひいては国民の安全・安心な生活は保証されません。 国民一人一人の意識改革が今こそ問われています。
「東京一極集中問題」に関する公表された構想および提言
東京一極集中の問題に関し、政府は過去に手をこまぬいていたわけではありませんが、時の政権は、卑近な政治課題を優先せざるを得ず、本問題解決に向けた幾つかの過去の構想は線香花火化し現在に至っています。
平成11年(1999年)12月20日、三権(立法・行政・司法)の中枢機能を東京圏外の地域へ移転する「首都機能移転」に関連し、国会等移転審議会は小渕内閣総理大臣に対し、移転先候補地として「栃木・福島地域」「岐阜・愛知地域」、そして将来移転先候補地となる可能性がある地域として「三重・畿央地域」を選定する答申を行いました。
審議会では、移転先候補地の答申を行うにあたり、16の評価項目と重要度を加味した点数付けを行った結果、栃木・福島地域(那須・阿武隈地域)が最高得点を獲得しました。
平成15年(2003年)5月28日および6月11日、衆議院および参議院国会の移転に関する特別委員会「中間報告書」がそれぞれ採択されました。衆議院国会等の移転特別委員会の大半の意見は、国会等の移転の意義・重要性を強く訴え、終始一貫し「移転を実現すべし」とするものでありました。しかし、参議院国会等の移転特別委員会は「今日の経済財政情勢、国民の合意形成の状況等を勘案し、防災対応機能、危機管理機能の中枢を優先して移転させるとともに、その他の機能についても、移転先を決定、移転を実施すべきものと考える」との結論でした。 その後国会は、第172回特別国会召集(2021年9月16日)、第173回臨時国会召集(2021年10月26日)、第174回通常国会召集(2022年1月18日)、と3回に召集されましたが、いずれも衆参両院の「国会等の移転に関する特別委員会」は設置されず、国としての首都移転問題は全く議論されていません。
令和7年(2025年)10月21日に発足した高市内閣と連立政権を担う「日本維新の会」は「新たな日本の実現のための基本的政策方針」として、「地方分権と東京一極集中の是正」を掲げ「中央集権体制と東京一極集中を打破し、地方分権、多極分散型の国家構造を実現する。そのための第一歩として首都機能を担える副首都大阪をつくり、中央省庁をはじめとした首都機能の一部を移転することで東京一極集中から東西二極への構造転換を実現する。また、地方政府の権限強化(道州制等の導入)により、現在の融合型行政を改め、国と地方の水平的な役割分担による効率的な行政を実現する」目標を掲げ、目的・指定・整備措置の3骨子を提案するとともに、「副首都法案」を、自民・日本維新連立政権の下、提出する準備を進めています。
| 目的: | 政府、行政、経済などの中枢機能、人口の一極集中を是正。災害など非常時の首都中枢機能の維持をはかる。 | | 指定: | 首相が道府県からの申し出に基づき副首都を指定する。指定要件は、「特別区の設置」、「都市機能などの集積」、「東京圏と同一の災害で著しい被害を受けないこと」とする。 | | 整備措置: | 副首都機能の整備のため、規制緩和や税制上の特別措置を適用する。 |
「地域課題分析レポート~ポストコロナ禍の若者の地域選択と人口移動~」(2024年秋号)は、「第1章 東京圏への一極集中の現状」において、国内の人口移動の状況に関するデータを分析することにより、どのような地域の間で人口の転出・転入が起こっているか、また、男女別、年齢層別にみた場合、人口移動にそれぞれどのような特徴があるか、さらに、そうした人口移動の傾向が近年どのように変化しているかなどについて確認していく、としています。
また、「第2章 若年層が東京圏へ集中する要因」では、アンケート調査などにより若年層が東京へ惹きつけられる要因を分析しています。
「東京一極集中の現状と課題~国土の長期展望に係る意見交換会~2021年3月11日」は、東京一極集中の問題について国際比較を含め、問題を総合的に分析しています。
令和元年(1989年)9月、内閣官房国土強靱化推進室は「戦略的政策課題『東京一極集中リスクとその対応』について」(資料3-1)は、東京一極集中が深刻な問題であることを提起しています。
■ 国土交通省、2021年3月11日付け、国土の長期展望に係る意見交換会報告「東京一極集中の現状と課題」の概要;
・東京圏の人口は、一貫して増加しており、2018年では約3,658万人(全国の約3割)となっている。
・国際的に見て、日本は首都圏人口の比率が高くかつ上昇が続いている。
欧米諸国との比較では、ロンドンは約14%、パリ約15%、ベルリン約4%、ニューヨーク約7%。東アジア諸国は、ソウル約19%、バンコク約11%、ジャカルタ約4%、北京約1%
・東京圏への転入人口は超過が続いており、超過数の大半を10代後半、20代の若者が占め、進学や就職が一つのきっかけになっていると考えられる。
・東京一極集中が起こる要因として、“修学・就職等のために20代前後の層が東京に流入”,
“魅力・利便性・自由度の高さ等を求めて東京へ流入”,“一度東京に来ると、地方に移住しにくい環境”などが考えられる。
・全国的に事業を展開している企業において、地域限定正社員、職務限定正社員を雇用する企業は15%前後。地域限定正社員や職務限定正社員への応募意向がある学生数に対し、その就職予定の学生数は少なく、学生の希望との間でギャップが存在。
■ 内閣官房国土強靱化推進室、令和元年(2019年)9月 戦略的政策課題「東京一極集中リスクとその対応」の概要;
東京一極集中による災害時の影響について、具体的な災害リスクを以下の分類に整理。
日本の人口の約3割である約3,600万人が暮らす東京圏で災害が発生すれば、膨大な建物被害と人的被害が発生するリスクがある。【被害想定】全壊及び焼失建物棟数(最大):約61万棟、死者数(最大):約1万6,000人~約2万3,000人
人口集中地帯の被災により、救急・救助活動に大量の人員が必要となるため、人員・物資が不足するリスクがある。また、医師、看護師、医薬品等が不足し、十分な診療ができない可能性がある。【被害想定】対応が難しくなる入院患者数:約1万3,000人
自宅と職場が近接していない通勤者が多いため、非常に多くの帰宅困難者が発生。こうした者が一斉に帰宅を始めると、混乱がさらに激しくなる可能性がある。また、事業所が被災した場合は、従業員が避難所等へ移動し、住民の避難スペースが不足するおそれがある。【被害想定】帰宅困難者数:約640万人~約800万人
膨大な避難者が発生するが、避難所の収容能力を超えるため、避難者受入体制の整っていない公園や空地等に多くの人々が滞留する状況が発生するおそれがある。【被害想定】2週間後の避難者数:約720万人(内避難所外約430万人)
発災直後、施設の被災や停電により、通話等ができなくなる可能性があるとともに、非常に多くの者が、通信回線を利用することから、大量アクセスによる輻輳が生じる。携帯電話のメールは使用できるものの、大幅な遅配が発生する可能性がある。【被害想定】1日後の回線不通率:48%、1日後の携帯停波基地局率:46%
・エネルギー供給施設等の被災による電気、ガス等の利用停止;
東京圏は発電量、エネルギー消費量、電力消費量が集中しており、被災による停電及びガス利用停止は生活活動の広範囲に渡って大きな影響を及ぼす可能性がある。また、停電が長期化した場合は、非常用発電設備の備蓄燃料だけでは足りなくなるが、燃料の需要が集中すること、激しい交通渋滞が想定されることから、追加燃料の確保が困難となるおそれがある。【被害想定】1週間後の電気供給能力:約2,800kw(ピーク需要比52%)、1週間後のガス供給停止戸数:約125万7,000戸
・東京湾コンビナートの被災による混乱と生産停止による影響;
湾岸域に立地するコンビナート等において大規模な災害が発生した場合には、近隣住民の避難、交通の利用制限等といった影響とともに、火災の拡大や湾内への油の流出等災害の拡大が想定される。【被害想定】流出:約60施設、破損等:約730施設
大規模地震発生の際には鉄道の運行停止等により移動手段が道路交通に集中し、道路施設そのものに対する被災や沿道家屋等の倒れ込みによる道路幅員の減少等と相まって、幹線道路を中心として深刻な交通渋滞が発生することが想定される。また、広域から多くの就業者が鉄道を利用して通勤しているが、鉄道が被災した場合長期間にわたり不通状態が継続するおそれがあり、企業活動等に大きな影響・混乱が生じるおそれがある。
道路の被災と深刻な交通渋滞や、取扱物の多い東京湾内の港湾施設の被災により、避難所への支援物資の搬送も含めて、被災地域内への食品や生活物資の搬入の絶対量が滞り、多くの深刻な物資不足が継続する可能性がある。【被害想定】東京湾内で被害を受ける岸壁数:約250岸壁
上下水道施設の被災による利用停止により、飲み水や生活用水の確保が困難になるとともに、トイレが利用できなくなり、汚水の処理等衛生状態に悪影響が生じる可能性がある。また、ポンプの機能停止により、降雨による内水氾濫のおそれがある。【被害想定】1週間後の断水人口:約851万6,000人、1週間後の下水支障人口:約119万9,000人
木造住宅密集市街地が広域的に連担している地区を中心に、大規模な延焼火災に至ることが想定され、大量の人的被害がでるおそれがある。【被害想定】地震火災による死者数(最大):約8,900人~約1万6,000人
・産業廃棄物処理場など復旧・復興のための土地不足;
首都直下地震では、道路啓開活動が困難な上に、瓦礫や放置車両の仮置き場に必要な空地が不足することなどから、道路啓開、交通渋滞の解消等がさらに遅れ、道路やライフライン等の復旧作業に大幅な遅延が生じるおそれがある。さらに、膨大な数の被災者が家屋を失うことから、応急仮設住宅が必要となるが、仮設住宅設置のための用地不足が想定される。【被害想定】災害廃棄物発生量:約9,800万トン(約8,500万㎡)
夜間及び休日に発災した際、交通機関の運行停止に伴い、職場に到達することのできる職員数が圧倒的に不足することが想定される。
・企業の本社機能の停滞による全国的な経済活動の低下;
企業の本社機能の停滞は、全国にわたる関係の店舗・工場、顧客・取引先、消費者等に影響が及ぶ可能性がある。また、サプライチェーン寸断による全国への生活から経済までの広範囲にわたる影響は避けられない。加えて、東京湾岸地域における石油化学製品の生産量は全国有数規模であり、石油化学系の部品供給が停止すると、自動車メーカーの他、様々な産業への影響が全国へ波及する可能性がある。
・羽田・成田空港の同時被災による海外及び国内の航空輸送への影響;
羽田・成田空港の国外・国内を含めた旅客・貨物量は、日本全体の大きなシェアを占めており、両空港のアクセスを含めた被災は航空輸送に大きな影響を及ぼす。
東京証券取引所等における証券取引については、大規模な災害発生等の社会情勢、情報が錯そうする中での流動性や価格形成の公正性・信頼性、証券会社等が被災した場合の市場参加者に対する機会の平等の確保等の観点から、一時的な取引停止が想定される。
同時に、海外等を中心に、被災情報や証券市場等に対する風評がインターネットにより流布され、市場の不安心理が増幅するおそれがある。
東京には大企業の本社等の拠点や海外の企業が集中しており、生産活動の低下や海外貿易の滞りが長期に渡った場合、調達先の海外への切り替えや生産機能の国外移転など、我が国の国際競争力の不可逆的な低下を招く可能性がある。また、このような事象から日本経済・日本企業に対する信頼が低下した場合、日本市場からの撤退や海外からの資金調達コストの増大、株価や金利・為替の変動等に波及する可能性がある。
海抜0m地帯など低地における高潮・津波・洪水による長時間の浸水の影響;
首都圏はゼロメートル地帯が広く分布しており、高潮・津波・洪水による浸水被害が発生し、長期間湛水したままの状況が続く危険性がある。
首都圏には軟弱地盤に人口密集地域があるため、被災による液状化や地盤沈下の影響が、災害の復旧への支障となる可能性がある。
現在実施している東京一極集中是正に資する施策をハード・ソフト別に、①東京圏から分散化させる、②東京圏と地方との対流を生む、③地方を活性化させる、に大別し、定量的分析に基づいて具体化を推進するとしている。
・東京一極集中の脆弱性を把握するモニタリング指標について;
年次計画2019を踏まえ、東京一極集中を把握するモニタリング指標について検討
重要業績指標(KPI)は、国土強靱化を推進するための各施策の進捗管理を目的とし、基準年度と現状値及び目標年度と目標値を定め進捗を管理、さらに、年次計画2019では、183指標を設定。
| 年度 | 転入超過数(人) | | 全年齢層合計 | (20~24歳)層 | (20~24歳)層の割合(%) | | 2005 | 92,829 | 51,886 | 55.9 | | 2010 | 119,357 | 66,517 | 55.7 | | 2018 | 135,600 | 74,996 | 55.3 |
| 年度 | エネルギー消費量(1000Kl/原油換算) | | 全国 | 東京圏 | 東京圏の割合(%) | | 2010 | 550,656 | 151,208 | 27.5 | | 2015 | 557,945 | 152,491 | 27.3 | | 2017 | 575,015 | 156,902 | 27.3 |
| 年度 | 電力消費量(1000MWh) | | 全国 | 東京圏 | 東京圏の割合(%) | | 2010 | 97,388 | 23,860 | 24.5 | | 2015 | 100,018 | 25,036 | 25.0 | | 2017 | 100,444 | 25,752 | 25.6 |
| 年度 | 雇用者数(人) | | 全国 | 東京圏 | 東京圏の割合(%) | | 2005 | 61,505,973 | 16,687,838 | 27.1 | | 2010 | 59,611,311 | 16,541,179 | 27.7 | | 2015 | 58,919,036 | 16,345,368 | 27.7 |
| 年度 | 雇用者数(人) | | 全国 | 東京圏 | 東京圏の割合(%) | | 2005 | 6,444 | 4,040 | 62.7 | | 2010 | 5,172 | 5,208 | 62.0 | | 2015 | 4,929 | 3,056 | 62.0 |
| 年度 | 県内総生産(生産側名目、億円) | | 全国 | 東京圏 | 東京圏の割合(%) | | 2005 | | | | | 2010 | 5,104,572 | 1,701,450 | 33.3 | | 2015 | 5,465,505 | 1,808,088 | 33.1 |
| 年度 | 海上出入り貨物(百万トン) | | 全国 | 東京圏 | 東京圏の割合(%) | | 2005 | 2,808 | 535 | 19.0 | | 2010 | 2,812 | 524 | 18.6 | | 2015 | 2,825 | 519 | 18.4 |
・さらに、東京一極集中の脆弱性を把握するモニタリング指標「東京圏のハザードを考慮した指標」数値について、「直轄河川の浸水想定区域における人口」、「震度6強以上、液状化の危険度が高い区域の人口」などは精査中である。
日本という国全体について東京を中心とした生態系と見た場合、生物の成立ち・保全・破壊・再生なる循環摂理との対比により「東京一極集中」の問題の理解を深めることができます。
・生態系は、多様な生物種の存在が基底にあり、3つのレベルから構成されています。
種の多様性: 地球上には約3000万種とも言われる生物が存在し、生物種の数・種類の違い多様性に富み、エコシステムとしての健全性や機能に重要な役割を果たしています。
生態系の多様性:森林、湿原、河川、海洋など様々な環境に対する生態系の違いがあります。生態系はそれぞれの環境に応じた独自の生物群を持ち、相互に影響を与え合っています。
遺伝子の多様性: 同一生物種内でも遺伝子は異なり個体間の特性や適応能力の違いを生み出します。遺伝子の多様性は、同一生物種の環境変化に対する適応能力を左右するため、種の保存にとって重要です。
・生態系(エコシステム)には、評論家の故立花隆が提唱した①非生物的環境(水・空気・土壌など)、②生産者(無機物質から有機物質を生産する植物)、③消費者(生産者が作った有機物を食べて消費する草食動物、さらにそれを食べる肉食動物)、④還元者(生産者や消費者の生命が失われた後、分解して無機物質にかえすバクテリアや菌類)の基本的要素があります。
・人間が生活する“場“も社会生態系(社会エコシステム)と言えるほど、自然界のエコシステムの4基本要素に類似しています。
・東京一極集中は、社会エコシステムの基本要素に照らしても、要素間のバランスを阻害しています。例えば、還元系の「ごみ処理」についても焼却処分は、炭酸ガスや塵埃の排出によって空気を汚染、埋立て処分は、23区内のごみが満杯まで50年と言われ、用地問題で早晩行き詰まることは想像に難くありません。
・また、東京が発出する社会・経済・文化などに関する物量・情報の集中は社会活動の効率を高めますが、反面国全体の単一化を促し国民の思考が同質化する結果、エコシステムの遺伝子の多様性を阻害、環境変化に対する様々な分野における革新を阻害、ひいては環境変化に対する国の適応性に多大な悪影響を及ぼします。
・日本という国を、太陽系になぞらえた場合、東京は太陽、地方都市は惑星、町村は地方都市の衛星と見なすことができます。
・東京一極集中が進むと東京・太陽系が存続するためには、地方都市・町村はそれなりに大きくなるか東京を巡る各軌道上で回転速度を速めるか、どちらかを達成しないと、東京・太陽系を維持できなくなります。
・これは、地方都市・町村が積極的に企業を誘致して地場経済・文化を活性化し、東京から地方都市へのUターンを促すしかありません。そうでなければ、行き着く先は全て東京にのみこまれ、日本という国は消滅する運命を辿ることになり、自然界の摂理です。
東京一極集中の全国に対する社会的経済的な指標の割合は概ね30%です。
昨今、科学技術の革新的進歩がもたらすデジタル化革命、急速に進む人口減少、増大を続ける医療介護費用、小・中学校における不登校生増加、外国人の社会への急速な浸透、国際情勢の不安定化など、わが国は目まぐるしい変化に直面しています。
また、災害大国である日本の国土は、いつ何時首都直下型大地震に晒されるか予測できず、ひとたび大地震が東京直下で起きた場合の惨状はいうに及ばず、政府機能の集中、産業特に大企業の本社集中は国の存立に関わるリスクをはらんでいます。
それにもかかわらず、問題の先送りが続く現実の背景に、東京が持つ機能を多極化・分散するデメリットは予測が困難なほど大きなものがあります。例えば、国会・官庁・企業などの分散に伴う各機能の非効率化、政治の停滞、施設機能の移転に伴う莫大なコスト、首都機能移転後の素晴らしき大都市・東京が衰退する可能性など。
さらに、世界唯一の国体・天皇制の象徴たる天皇のお住まい皇居の存在があります。
いずれにしても、首都機能の分散・移転に際して国全体の負担コストは莫大なものとなります。しかしながら、東京一極集中問題の解決し、「国の安全」と「国体の安泰」を確保することは先送りを許されず、実行は一刻を争うといっても過言ではありません。
国土交通省・国土の長期展望に係る意見交換会「国土の長期展望に係る意見交換会報告(2021年3月11日)」によれば、一極集中問題の緩和・解決を可能にする昨今の社会動向“テレワークの進展による「職場と仕事の分離」”、“地方移住への関心の高まり”、“「豊かさ=賃金の高さ」からの意識転換”の3項目が解決への糸口になり得る、としています。
東京に拠点を置く上場企業の「今後のテレワーク利用方針調査」によれば、新型コロナウイルス感染拡大の終息後も見据えた今後のテレワークの利用の方針について、拡大が18%、維持が53%で、拡大・維持するが7割を占めますが、現状を維持するという回答が最も高くなっています。
因みに、2025年9月29日、アサヒグループホールディングス(GHD)がサイバー攻撃によるシステム障害を受け、「2026年2月にも復旧させ、商品の受注・出荷を通常の状態に戻すことを目指している」と報道されました(2025年11月22日、日本経済新聞)。全面復旧に4か月以上かかり、テレワークの推進による効率化の追求に欠かせない“サイバーセキュリティ”をいかに担保するかの問題が表面化しました。
「ふるさと回帰支援センター」の来訪者・問い合わせ件数は、近年飛躍的に増加しており、地方移住への関心は高まっていると考えられ、特に40代までの若い世代が地方移住へ高い関心を示しています。
東京都の可処分所得は全世帯平均では全国3位、都道府県ごとに可処分所得の上位40%~60%の世帯とする中央世帯の平均は12位です。
一方で中央世帯の基礎支出(※)に示す食・住関連の支出は最も高いため、可処分所得と基礎支出との差額は42位。
さらに、費用換算した都道府県別の通勤時間(国土交通省試算)を差し引くと、東京都が最下位。すなわち、 東京都の中間層の世帯は、他地域に比べ経済的に豊かであるとは言えない、と結論付けられます。
(※)基礎支出=「食料費」+「(特掲)家賃+持ち家の帰属家賃」+「光熱水道費」。なお、「持ち家の帰属家賃」は全国消費実態調査で推計している。
国土交通省・国土の長期展望に係る意見交換会が指摘するように、東京一極集中問題を解決し国の存立に係る破局的事態を回避する行動に移す時は、今をおいてないと思います。
政・官・経・財・学・医など各セクターは、他人事として政治に任せるのではなく、各界ごとに個々の組織が持つ様々な意見・考えを整理、集約、本問題の解決に向け本気で取り組まなければなりません。
東京一極集中問題解消と地方創成・活性化の政策は不可分の関係で、同時に進めなければなりません。
また、地方創成と国際化は不可分です。日本に空港は拠点空港、地方管理空港、その他の空港を含む数は約89か所あります。主要な地方管理空港を拡大、高度化し利用の拡大をはかれば地方独自の国際化が一層進められ、地方の活性化に寄与します。地方公共団体の首長は庁舎から出て、海外へ向け自ら”おらが町”の売込み営業を展開すべきです。
ちなみに、副首都構想および地方創成・活性化は高市自民・日本維新連立内閣の目玉政策で、東京一極集中の解消を強力に推進することは自然な流れともいえます。
並行して地方の各都市は、地場産業や基幹産業、スタートアップ企業を”おらが町”へ誘致、新産業クラスターの形成・育成、はたまた子供の養育・福祉政策などにより、流入人口増につなげていかなければなりません。
TSMCが工場進出した九州熊本市、ラピダス社が工場建設中の北海道千歳市、キオクシア社が核となって発展している岩手県北上市、子育てし易い町長野県箕輪町、県立高等学校の国際化を成功させた広島県上大崎町など、すでに成功事例は少なくありません。
かくして、東京一極集中問題の解消に向けての実行を促すには、構想段階から脱することは勿論のこと、”東京都以外の道府県人口減少”、”公営住宅の空き家率”、”東京へ集中する預金利子税収”など個々の問題対応など小出しの改革ではなく、一歩二歩進んだすべてのセクターが参加する“オール日本体制”による首都移転マスタープランを作成することが不可欠です。マスタープランは、昭和37年(1962年)当時の経済企画庁が策定し、地域間の均衡ある発展を目指した第一次全国総合開発計画・新全総、三・四・五全総と続いた復刻版ではなく、首都機能の分散先の都市をはじめ、関係するすべての地域の都市計画を含む総合計画行程に基づいて、内閣総理大臣をヘッドとする実施組織、要員、物資調達、資金計画、財源および年次実施計画など様々な具体計画を定量化することが必要不可欠です。
構想段階から脱した具体性のあるマスタープラン無くして、国民をいくら鼓舞しても、東京一極集中問題解決の端緒とはなり得ません。国家プロジェクト体制で取り組むことが具体化に向けての唯一の道です。
|
|
|