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アーカイブ 研究所長・井坂 公明 メディア 2023/10/25
朝日新聞社は10月19日、同社の媒体力を示すデータである「朝日新聞メディア指標」を公表した。それによると、9月の朝刊販売部数(日本ABC協会調べ)は357万3000部で、3月に比べ18万8000部減った。また9月末現在の朝日新聞デジタルの有料会員数は30万3000人と、3月末比で2000人のマイナスと伸び悩んでいる。朝刊部数とデジタル有料会員数の合計は387万6000で、同19万の減少となった。
朝日新聞社は2023年1月、「朝日新聞メディア指標」(22年12月現在)を初めて公表し、その後4月(3月現在)と10月(今回)に更新した。今後も原則として毎年4月と10月の2回、更新するとしている。今回公表したその他の指標は、朝日ID会員数が621万人(9月末現在、3月末比24万人増)、月間ユニークユーザー数が3382万人(朝日新聞デジタルのウエブ版7~9月平均、1~3月平均比9万人増)、LINE友だち登録数578万人(9月時点、3月比9万人増)。朝日ID会員数など3つの指標は前回に比べプラスとなったものの、主要な指標である朝刊部数と朝日新聞デジタル有料会員数はマイナスとなった。
1月公表分と4月分、今回分の指標の推移は以下の通りだ。
朝刊部数は、383万8000部、376万1000部、357万3000部。
朝日新聞デジタル有料会員数は30万5000人、30万5000人、30万3000人。
朝日ID会員数が580万人、597万人、621万人。
月間ユニークユーザー数が3981万人、3373万人、3382万人。
LINE友だち登録数は561万人、569万人、578万人。
朝刊部数は減少傾向、デジタル有料会員数は頭打ちの状態、朝日ID会員数とLINE友だち登録数は増加傾向。月間ユニークユーザー数は減少基調とみられる中でやや不規則な動きをしている。メディア指標の公表が始まってからまだ10カ月ほどだが、サブスクリプション(定期購読)収入に直接響く朝刊部数とデジタル有料会員数という主要な指標を重視すれば、朝日新聞社のメディアとしての力は低下しつつあると言えよう。
メディア指標の中で興味深いのは、朝日新聞デジタルの有料会員数が久しぶりに公表されたことだ。朝日新聞デジタルは11年5月創刊。同社の15年度までの有価証券報告書によると、有料会員は13年3月末に10万人を超え、14年3月末には12万8000人、15年3月末に17万6000人、16年3月末には27万5000人と順調に増加した。しかし、16年度の有価証券報告書から有料会員数の記載がなくなり、22年度分まで同様の状態が続いている。
23年1月の指標公開により有料会員数は実に約7年ぶりの公表となった。1月公表分が30万5000人なので、約7年間で3万人しか増えていない計算となる。しかも10月公表分では2000人ではあるが減少した。朝日新聞社は「プリントメディア事業の徹底した合理化を進めるとともに、デジタル事業の成長に注力する」(22年度有価証券報告書)としている。しかし、この7年間朝日新聞デジタルの有料会員を増やそうと全社一丸となって努力してきたのか?残念ながらそうした本気度は感じられない。紙の新聞の販売部数がこの10年間で年平均約40万部のペースで落ち込んでいることを考えると、今後デジタル版の有料会員を本気で増やさなければメディアとしての力がさらに低下するのは避けられないだろう。
全国紙の中でデジタル版の有料会員数を公表しているのは、朝日新聞のほかは日経新聞だけだ。日経新聞は1月と7月の年2回、本紙紙面と日経電子版で朝刊販売部数や電子版有料会員数などを公表している。日経電子版は10年3月にスタート。有料会員は13年10月に30万人、17年1月には50万人をそれぞれ突破。その後、一時80万人前後で伸び悩んだ時期もあったが、23年7月現在87万3000人余りに達している。有料会員100万人のネットメディアが誕生すれば画期的なことだ。
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