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    アーカイブ 研究所長・井坂 公明 メディア 2023/12/28
    新聞発行部数2859万部、ピーク時の半分に-新聞協会発表
    =前年比225万部減、減少率は7.3%で過去最大=
     日本新聞協会が12月26日に公表した2023年(10月現在)の加盟日刊110紙の総発行部数は2859万486部と、前年に比べ225万6145部、7.3%の大幅な減少となった。発行部数はピーク時の1997年(5376万部)の53%にまで落ち込んだ。前年比の減少率は97年以降で最大。減少基調が続いているのに加え、全国紙や地方紙が新聞用紙代の値上げを主な理由とする購読料引き上げを相次いで実施したことも新聞離れを促したとみられる。
    ◆この6年間で1353万部が消失
     新聞協会によると、23年の発行部数は一般紙が2667万4129部(前年比7.0%減)、スポーツ紙が191万6357部(同10.9%減)で、総発行部数は3000万部を割り込んだ。発行形態別で見ると、朝夕刊セット(1部として計算)部数が445万6199部(同24.8%減)、朝刊単独部数は2368万1695部(同2.9%減)、夕刊単独部数は45万2592部(同12.6%減)。セット部数が大幅に減少した大きな要因としては、静岡新聞や朝日新聞(愛知、岐阜、三重3県)、毎日新聞(同)、北海道新聞、信濃毎日新聞が夕刊を廃止したことを挙げることができる。また、2000年には1.13あった1世帯当たり部数は、部数減と世帯数の増加を背景に、ついに0.5を割り込んで0.49にまで下がった。
     発行部数は97年を頂点に基本的に減少が続いていて、下げ止まる兆しは見えない。特に18年以降は200万部を超えるマイナスが常態化しており、減少のペースが速まっている。17年からの6年間で合計1353万部が失われた。
    ◆全国紙が減少分の7割占める
     新聞協会が公表した数字は全体の発行部数だけなので、新聞ごとの増減は明らかでない。そこで日本ABC協会がまとめた日刊紙の直近の朝刊販売部数(23年11月現在)を見ると、全体では2504万部(千部以下切り捨て、以下同)で前年同月に比べ193万部(7.2%)の減少となった(この1年以内にABC協会から脱退した日本農業新聞など3紙分は除いて計算)。全国紙では読売新聞が612万部で前年同月に比べ44万部(6.8%)減、朝日新聞は352万部で37万部(9.7%)減、毎日新聞は160万部で23万部(12.9%)減、日経新聞は141万部で23万部(14.4%)減、産経新聞は89万部で9万部(9.7%)減だった。
     全体の減少分の72%を全国紙が占めた。主な地方紙も前年同月に比べ軒並みマイナスとなったが、減少率は全国紙に比べまだ低いところがほとんどだ。ただ、高齢者の割合が高い地域を抱える地方紙が多く、今後読者がさらに減っていくのは避けられそうにない。
    ◆「2025年の崖」が迫る
     紙の新聞は今や高齢者のメディアだ。年代別に見ると最も新聞を読んでいるのは70歳以上で、次が60代だ。その高齢者は定年を迎え年金生活に入るなどの事情により、徐々に新聞市場から退出していく。中核的な読者層である団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となる「2025年の崖」も近づいてきた。一方、インターネット特にスマートフォンの普及を背景に若年層の紙離れは一貫して拡大している。
     全国紙では、「部数減→収入減→人員削減→取材力低下」の悪循環に陥っているところが多い。紙の新聞に代わる収入源を早く開拓しなければ、新聞社の報道機関としての機能はこのまま減衰していってしまうだろう。紙に代わる収入の柱としては、不動産やデジタル、イベントなどが候補に挙がっている。しかし、不動産への依存が大きくなり過ぎると、「不動産業も行う新聞社」から「新聞も発行する不動産会社」になってしまう。報道機関である以上、やはり主にニュースで稼ぐのが正道と言えよう。
     全国紙では、日経新聞が日経電子版の有料会員を87万3000人(23年7月現在)まで伸ばし、紙の新聞の減少を補えるところまできている。遠からず電子版が紙に代わって主役の座に座ることになるだろう。しかし、朝日新聞デジタルの有料会員は30万3000人(23年10月現在)にとどまるなど、他の全国紙はデジタルで生き残るめどはたっていない。読売新聞はあくまで紙の新聞にこだわり「唯一の全国紙」を目指しているが、先行きは不透明だ。結局、米ニューヨーク・タイムズのように電子版(デジタル版)を紙の新聞とは全く異なるメディアに育て上げ、若年層や中年層をターゲットに有料会員を地道に増やすしか手はないのではないか。残された時間はそう多くはない。(了)



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