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    アーカイブ 研究所長・井坂 公明 メディア 2024/12/26
    新聞総発行部数2661万部、ピーク時からついに半減-新聞協会発表
    =高齢者の紙離れで部数が急減する「2025年の崖」が現実化の懸念も=
     日本新聞協会が12月24日に公表した2024年(10月現在)の加盟日刊106紙の総発行部数は、2661万6578部と、前年に比べ197万3908部、6.9%の大幅減少となった。発行部数はピーク時の1997年(5376万部)の49.5%にまで落ち込み、ついに半数を割り込んだ。前年比の減少率は23年(7.3%減)よりは小さかったものの、依然高率のままだ。23年に続き24年も新聞各紙の購読料引き上げが相次いだことなどが響いたとみられる。新聞の中心的な読者である団塊の世代が24年中に全員75歳以上の後期高齢者となることから、新聞業界では、高齢層の新聞離れにより部数が急減するという趣旨で話題に上っていた「2025年の崖」が現実のものになることを懸念する声も出ている。
    ◆前年比197万部、6.9%減、下げ止まる兆しは見えず
     新聞協会によると、24年の発行部数は一般紙が2493万8756部(前年比6.5%減)、スポーツ紙が167万7822部(同12.4%減)。発行形態別で見ると、朝夕刊セット(1部として計算)部数が391万6505部(同12.1%減)、朝刊単独部数は2229万7326部(同5.8%減)、夕刊単独部数は40万2747部(同11.0%減)となった。セット部数の大幅減の要因としては、全国紙、地方紙とも夕刊の減少率が総じて高いことや、新潟日報の夕刊廃止、朝日新聞が北海道と静岡・山口・福岡3県で、日経新聞が静岡県などで、東京新聞が東京23区以外での夕刊発行をそれぞれ取りやめたことなどが挙げられる。1世帯当たりの部数は前年の0.49からさらに下がって0.45となった。
     発行部数は97年以降長期低落傾向が続いており、下げ止まる兆しは見えない。特に18年から23年までは200万部を超えるマイナスが継続していた。24年は197万部減と減少幅はやや小さくなったが、減少率が高止まりしていることに変わりはない。
    ◆全国紙が減少分の6割占める
     新聞協会が公表した数字は全体の発行部数だけなので、新聞ごとの増減は分からない。そこで日本ABC協会がまとめた日刊紙の朝刊販売部数(24年10月現在)を見ると、全体では2354万部(千部以下切り捨て、以下同)で、前年同月に比べ159万部(6.4%)の減少となった。全国紙では読売新聞が575万部で36万部(6.0%)減、朝日新聞は333万部で21万部(6.1%)減、毎日新聞は136万部で25万部(15.5%)減、日経新聞が135万部で6万部(4.5%)減、産経新聞が83万部で7万部(7.9%)減だった。
     全国紙5紙の合計では前年同月に比べ96万部のマイナスで、全体の減少分の60.3%を占めた。主な地方紙の減少率は全国紙に比べまだ低いところが多いが、少なくとも8紙が全体の減少率(6.4%)を上回っている。今後、高齢層の新聞離れが進んでいけば、高齢者の多い地域を抱える地方紙の部数がさらに減っていく可能性が高い。
    ◆毎日、産経が「全国紙」から脱落
     ウクライナ戦争や円安を要因とする新聞用紙代の大幅値上げを受けて、一連の購読料値上げが始まったのは23年春だった。同年中には読売新聞を除く全国紙4紙と西日本新聞など少なくとも23の地方紙が値上げした。24年もその流れは止まらず、北海道新聞など少なくとも11の地方紙が続いた。25年は1月から読売新聞と北國新聞が値上げに踏み切る予定で、中日新聞も春以降の値上げを検討している。値上げは購読停止の大きな理由、きっかけとなるだけに各紙とも対策に追われそうだ。
     24年には、毎日、産経両新聞が10月1日から富山県で新聞発行(配達)をやめるという衝撃的な出来事があった。毎日新聞は取材拠点は県内に維持しているが、産経新聞は全面撤退の形だ。全国紙を編集と販売の両面から①全都道府県に取材拠点(記者)を置いている②刷り上がった新聞を全都道府県(沖縄県を除く)で翌朝(遅くとも午前中)に配達できる-の双方を満たす新聞と定義すれば、これで全国紙は3紙に減ったことになる。ただ、電子版がもっと普及してくれば、①の要件を満たすだけで全国紙と言えることになるかもしれない。いずれにせよ「5つの全国紙-3つのブロック紙-県紙-地域紙」という戦後長い間続いてきた新聞業界の秩序が崩れ始めているのは確かだ。
    ◆日経電子版の有料会員が100万人突破、読売は法人向け新サービスに挑戦
     新聞部数の減少を踏まえ、各新聞社とも、紙の新聞に代わる収入の道を探している。日経新聞の日経電子版はまもなく創刊15年を迎えるが、24年12月1日時点で有料会員が101万人となり、国内の有料デジタルニュース媒体としては初めて100万人を超えた。数年後には日経新聞の朝刊販売部数を上回り、紙に代わってデジタル媒体が主役の座に就くことになりそうだ。
     最大部数を抱える読売新聞は25年春から、米ダウ・ジョーンズ社と提携して法人向けデジタルニュースメディア「DOW JONES 読売新聞 Pro」を創刊する。かつて1千万部を誇った同紙も今や600万部を割り込んでいる。そうした中で、新たな収入源を求めて不動産やエンターテインメント関係に力を入れてきた。その一環として、25年3月に算出・公表を始める新たな株価指数「読売333」と合わせ、日経新聞の牙城である経済分野に挑戦する。読売新聞はあくまで紙の新聞にこだわり個人向けの有料デジタルニュース媒体は発刊していないが、これを法人向けに限定するのか、それともいずれは個人向けにも踏み込むのかという点も注目される。
     部数減が止まらない中、新聞社が報道機関として生き残るにはどうすればいいのか。25年も各社各様の模索が続く。(了)



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