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    アーカイブ 月刊ニューメディア 2025年2月号 水野 泰志
    民放ローカル局の再編が始まった!
      日本テレビ系列の基幹4局が経営統合
    Mizuno's EYE メディア激動研究所代表・水野泰志
     民放ローカル局の再編がついに始まった。日本テレビ系列(NNN)の札幌テレビ、中京テレビ、読売放送、福岡放送の基幹4局が2025年4月、新たに設立する持ち株会社の下に経営統合することになったのである。収入減にあえぐローカル局は、水面下でさまざまな生き残り策を模索してきたが、形になって浮上した初めてのケースで、放送界に大きな衝撃を与えた。もっとも、ローカル局の事情は複雑で、他のキー局系列に一気に波及するかどうかは予断を許さない。
    「全国紙vs地方紙」という対決構図も想定される!?
     新設する認定放送持ち株会社の名称は「読売中京FSホールディングス(FYCSHD)」。完全子会社となる4局は、新たな協力体制を構築して経営基盤を安定させ、魅力的なコンテンツを作っていくという。
     もともと、NNN系列のローカル局(29社)は「日本テレビネットワーク協議会(NNS)」を通じて連携を図ってきたが、4局はそれぞれ北海道東北、中部、近畿中四国、九州の基幹局に位置づけられていることから、系列局はエリアごとに4局の傘下でより緊密に結束していくことになるとみられる。
     もっとも、FYCSHDは、日本テレビホールディングス(HD)が20%以上の株式を保有して筆頭株主となって持ち分法適用会社となるため、中間持ち株会社的存在といえる。つまり、日本テレビHDを頂点に、FYCSHDを介して、ピラミッド構造の全国ネットワークが形成されようとしているのである。
     さらに言えば、日本テレビHDの大株主は読売新聞グループだから、今回の経営統合劇は、読売新聞が、全国のNNN系列局を、強固な資本関係を築いて、事実上、支配下に置こうという狙いが透けて見える。
     とはいえ、中には有力地方紙が大株主になっている局も少なくなく、「全国紙vs地方紙」という対決構図も想定され、今後の一段の再編は一筋縄ではいきそうにない。
    NNN系列のケースは「上からの統合」に見える
     ローカル局の再編話は、2011年の地上放送のデジタル化前後から、くすぶってきた。経営基盤が弱いうえに、デジタル化の重い負担、少子高齢化による人口減少、狭い商圏での競合、さらにテレビ離れなど、将来への不安が徐々に大きくなりつつあったからだ。ただ、ひとくちに再編といっても、系列局同士による統合、同じエリア内での合併、1局2波体制など、さまざまなケースが想定された。
     平成に入ってから開局したローカル局(平成新局)を多く抱えるテレビ朝日系列(ANN)は、早くから九州エリアや東北エリアでの統合を模索。フジテレビ系列(FNN)も、東北エリアでの再編を探ってきた。しかしながら、ローカル局は、地元財界などの資本が複雑に入り組んでいるため、利害が絡み合い、なかなか再編の機運が盛り上がらなかった。
     こうした動きを「下からの再編」とするならば、今回のNNN系列のケースは「上からの統合」ということができる。
    「総務省vs経産省」の省益争いも見え隠れする
     ローカル局の経営は厳しさを増しており、放送局127局のうち21局が2023年度に赤字を計上した。放送局の経営破綻だけは避けたい総務省は、放送局を縛ってきたマスメディア集中排除原則の緩和策を小出しに打ち出し再編の環境を整えてきたが、いずれも中途半端で、本格的な再編にはつながらなかった。それだけに、FYCSHDの発足に安堵しているに違いない。そこには、安倍晋三政権下の2018年、経済産業省の影響力の強い政府の規制改革推進会議が打ち上げた「民放不要論」への対抗心がある。ローカル局の存亡には「総務省vs経産省」の省益争いも見え隠れするのだ。
     「放送界再編の号砲が鳴った」という声が聞かれるが、キー局やローカル局の実情をみれば、一直線には進みそうにない。放送の多元性・多様性・地域性を確保しつつ、ローカル局を再編するのは容易ではなさそうだ。



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