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アーカイブ 国際観光施設協会 コラム 2013/01/01 佐野 桃子
佐野桃子の観光インタビュー UL代表取締役社長キース・ウィリアムズ
キース・ウィリアムズ(Keith Williams)さん 経歴 Case Western Reserve Universityで学士号取得(Engi- neering専攻) General Electric Co. に 23 年勤務 1993年から1996年は北京でGE Medical Systems Chinaの社長 1997年 Medtronic社(心臓のペースメーカ―製造販売最大手の会社)のアジア太平洋地域担当社長に就任。 5年間日本に滞在。脊髄麻酔神経科部門社長、品質管理・規制部門担当社長を兼務 2005年 Underwriters Laboratories Inc.(略称 UL、本社米国シカゴ)の 10 代目社長に就任現在に至る UL 本社 URL:http://www.ul.com/global/jpn/pages/ UL日本 URL:http://www.ul.com/japan/jpn/pages/
Q以前に照明業界で働いていたので、UL と言えば、「泣く子も黙る」警察のような組織だと思っていました。「ULは?」と言っても日本人ではピンとこない方がたくさんいると思いますので、お手数ですが、わかりやすく説明していただけますか?
キース: ULは火災保険業界が1894年に創設した企業で、電気製品が引き起こす火事や電気ショックによる死傷事故や物損を最小限にすることが1番大きな役目でした。電気という新しい技術をいかに安全に使うかということが当時、人類にとって 1 番大きな課題だったのです。 ULは電気製品の安全をどう確かめるか、その検査法を編み出して実施し、合格した製品を認証し、また一方で、電気製品の安全基準そのものを作りあげてきました。
アメリカで電気製品を見るとか必ずと言ってよいほどUL のマークがついていますが、それは UL の基準に合致して認証された安全な製品で、安心して購入して大丈夫ということを意味します。
台所で火を噴かないトースター、子供が閉じ込められても内側から開けられる洗濯機、ペットや子どもをはさみこまないガレージのドア。人々は安心してこういった製品を購入できるようになりました。
やがて、ULは火災探知機や一酸化炭素探知器の安全認証基準を創設しました。
一方で、アメリカの家では一軒につき、300種類以上のプラスティックや発泡プラスティックが建材や家具の材料として使われており、そこから人間の健康に害を与える揮発性有機化合物が発散されていることが知られています。その検査も行っています。
キース: 他にも、たとえば、クレジットカードのチップとPIN の決済機能の安全検査やスマートフォーンなどの決済機能の安全検査も担当して実施しています。
Qすごいですね。私たちの生活に必要な安全確認というか、安心のための検査というのはどれもUL が担当し得るということですね。
キース: ULのミッションは英語で Public Safety表現されている「公共の安全」を守ることです。新しい技術が人間の生活に取り入れられて便利になるのですが、技術導入の時はいつも慎重に人間の安全を確認しながら、進まなければなりません。火災やけがや生命の危険がある製品は断じて退けなければなりません。
Q本当にそうですね。観光も安全に強く影響される分野です。安全でないと人は来ませんから。英語でSafetyとSecurityとあって、日本語ではどちらも「安全」と訳されるのですが、どのような違いがありますか?
キース: Safetyは自然の災害や人災から守られることです。Securityは人と人との関係で安全に守られることです。観光の分野ではULは主にSafetyに関して力を発揮していますよ。
観光施設にとって防火防災はもっとも大切なことです。
一酸化炭素探知機は必ず備えなければならないものです。石油や天然ガスの不完全燃焼で一酸化炭素が発生するとアッという間に人間は死んでしまいます。怖いですよ。
スプリンクラー装置は火事が発生したときは、被害を最小限に食い止める大切な装置です。ホテルで客がちょっとした不注意で火災を引き起こすことはよくありますが、よいスプリンクラー設備がホテルに備わっていれば、火事をすぐに止め、死傷者を出さずに済むのです。
避雷装置もゴルフ場や公園ではとても大切です。きちんとした避雷施設がないと事故がおこります。
安全な水の確保もホテルにとっては重要な課題です。当たり前のようなことですが、安全な水をいつも十分に提供することはお客様の健康を守ることです。
セーフティーボックス、これも UL のお得意分野です。電気を使った装置ですから、電気製品としての安全性と、貴重品を守るという安全性の両方の検査をします。
建材の安全性というのは、今では家庭が直する一番大きな安全性の課題の一つになっています。ドライウォールや屋根材、防火用ドアなどの耐火性のランク付けを行っています。
先ほどお話しした、揮発性有機化学物質がマットレスや家具、ペンキや接着剤からどの程度発散しているか検査し、発散度がきわめて低い製品にはグリーンガードマークを与えています。これをもっているホテルには安心して滞在できるというわけです。
Momokoがよく知っている電気設備、照明設備はもちろんUL の独壇場です。電球、プラグなどの製品としての認証だけではありませんよ。LED についてはその省エネ度合いのランク付けをしていますし、LED の人間の視覚に対する影響については慎重に研究を重ねていますし、指導も行っています
ULマークのついたおしゃれな消化器 安全を認証する UL マーク
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Q先日、その報告書を拝見しました。LED は条件なく省エネで良い新しい技術だと思っていましたが、やはり、人体への影響を考えながら慎重に正しい商品を選んでいかなくてはいけないのですね。 ところで、キースは本当に出張が多いと奥様のかおりさんからうかがっているのですが、どのくらい、飛行機に乗っているのですか?宿泊したホテルの数は?
キース: 今、マイレージは700万マイルと記録されています。地球一周23,000マイルとか25,000マイルとか言われていますから、地球300回ったことになるでしょうか。ホテルと言えば、38年間で1,000軒以上のホテルに宿泊しているのではないでしょうか?
Qすごいですね。ホテルのエキスパートになれますね。ホテルはインターネットで予約してあって、ホテルの入り口を入ると、すぐにフロントの人が近づいてきて、「キースさんですね。あなたのお部屋は、ご希望 り、前回と同じお部屋をご用意しました。鍵をお渡しします。」と鍵を渡していれるというようなフロントデスクもない、家庭に帰ったときと同じような心のこもった歓迎の方法があると、さっき、キースは言っていましたね。
キース: インターネットの技術と顔認証の技術を上手に組み合わせるとそんなホテルのチェックインも案外簡単ですよ。そのほうがホテルにとっても経費節減になるし、なによりお客様が暖かく迎えられたと喜びます。
Q確かにそうですね。ところで、キースは大の日本びいきとお聞きしましたが、1番好きな街はどこですか?
キース: やっぱり、東京と京都ですね。あと、温泉は大好きで、湯河原と登ではゆっくり温泉を満喫しました。奥湯河原の海石榴(つばき)はたいへん気に入りました。東京六本木のグランドハイアットも大好きなホテルで、いつも快適に過ごしています。
Qところで、超人的に忙しい毎日で出張も多い中、いったいどのように自分をリラックスさせていますか?
キース: 妻のかおりとおしゃべりをすること、ゴルフ、ジムで体を動かすこと、それに上質のワインとシングルモルトのウイスキーがあれば最高です。私のストレス解消は簡単でしょ?
Qキースがイライラしているのを見たことがないって、かおりさんが言ってましたよ。つい、ばたばたしてイライラしている自分を反省しています。
キース: 大丈夫。Momokoもいつもリラックスしてゆったりしているように見えますよ。笑
インタビュー後記 ULのことを私なりに勉強して、わかったつもりでキースにインタビューしたのですが、キースから聞いたことは「目からうろこ」の話ばかりでした。キースはとても楽しい方で教え上手。メールには1分とか2分後に返事があって、それもロンドンからだったり、北京からだったり。グローバルリーダーってキースのような方なんだと実感しました。
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