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    アーカイブ 国際観光施設協会 コラム 2025/01/10 佐野 桃子
    佐野桃子の観光インタビュー JRホテルグループ事務局長の 山田 幸秀 氏
    山田幸秀 氏 略歴
     1956 年 東京生まれ
     1976年 京王プラザホテル
     1978年 都ホテル東京
     1984年 ホテルメトロポリタン
     1995年 メトロポリタン長野
     2006年 メトロポリタン丸の内
     2017年 メトロポリタンエドモンド
     2019年 メトロポリタン高崎 & 長野
     2022年 日本ホテル JRホテルグループ
     2024年 日本ホテルJRホテルグループ事務局長 現在に至る
    佐野:
     本日は大変お忙しいところ、お時間をとっていただき、インタビューを受けていただき、ありがとうございました。
    山田氏:
     私で役にたちますか?
    佐野:
     はい。お聞きしたいことがたくさんあります。全国にあるJRホテルグループの事務局長ってすごいですね。88のホテルがメンバーだと伺っています。どのような経緯でホテル業界にお入りになったのでしょうか。まずそこからお聞きしたいのですが。
    山田氏:
     私は現場人間なんです。宴会部長をしていて、結婚披露宴で失態があって、「どうしてくれるのか。一生に一度の結婚式と披露宴なのに、どう責任を取ってくれるのか」とお客さんが立腹している。宴会担当支配人もオロオロしているときに、「そうですね。こんな大事な、一生一度の時に、失敗など許されないですよね」と私はお客様の立場に立ってしまうのです。
    何しろお客様と信頼関係をどう作り、どうお客様に寄り添うか、そればっかり考えてこれまでやってきました。
    はじめからホテル業界を勉強して、ここで身を立てようと思ってやってきたわけではありません。まず大学生の時に、ラーメン屋でバイトしたのが、飲食業に足を踏み入れた第一歩でした。入りたては料理はさせてもらえなくて、夜中まで皿洗い。そのうち、自宅の近くの銀座アスター蒲田店でバイトするようになりました。それ見て、当時ホテルオークラで働いていた、親戚の叔父がコーヒーハウス(カメリア)で働いてみないかと声をかけてくれました。
    カメリアでは髪型とか洋服とか行儀作法がうるさくて、とても続かなかったのです。ところがその叔父の友人が開店4年目の京王プラザホテルに呼んでくれました。その頃になると、ホテルのF&Bが面白くて、大学を中退して、ホテル業界にのめり込んでしまいました。それから都ホテル東京(現在のウェスティン都ホテル東京)開業スタッフで誘われて移動しました。その頃新婚だったのですが、主賓を務めてくださった長門さんが初代のメトロポリタンの宴会部長で私を誘ってくださって、JR ホテルとのご縁ができました。 長門さんには何から何までお世話になってしまいましたね。ところが早く亡くなったので、それからは、いつもお墓にお参りして、ご報告だの、愚痴を聞いてもらったり、いつもお墓に語りかけています。
    佐野:
     ご縁を大切にされるのですね。
    山田氏:
     人間関係からすべては始まると考えています。私は人に恵まれたのです。
    佐野:
     そう言い切れる山田さんは、優しい心を持っていらして、幸せを感じることのできる、素晴らしい才能をお持ちの方だと拝察します。
    山田氏:
     そんなに言っていただくと恐縮なのですが、ホテルが成功するかどうかは、お客様に接するスタッフがどんな気配りができるか、ということで決まってしまうと思います。最近はAIの導入でホテルのサービスも無人化の方向にむかっています。予約電話も自動応答から入るシステムがほとんどです。レストランの人が受け付けて出た時は、自動応答を経たお客様だと認識しての対応が必要だと思います。「自動応答のプロセスを通り越しておいでくださり、ありがとうございました」と言った挨拶ができるかどうか、それによってホテルの印象が全く変わると思います。
    佐野:
     歓迎の言葉がそう表現されたら、嬉しいですね。
    メトロポリタン(池袋)は今年40周年を迎えるフラッグシップアクセントのJade Blueはホテルズのコーポレートカラーです
    山田氏:
     毎年、NTTグループ主催で「電話応対コンクール全国大会」が開催されていて帝国ホテルがいつも入賞しています。その勘所を抑えているのですよ。大したものです。
    優秀なスタッフがお客様にしっかり寄り添うのを上の人はしっかり見ていて、評価しなければ、楽しい職場にはなりません。楽しい職場で従業員が幸せなことが大切です。
    飯田橋のメトロポリタンエドモンドには開業以来ずっと働いている女性が 6 人いるのですが、自分の働くホテルで宿泊したことも食事したこともないというので、皆に客室も存分に見せて、レストランで夕食会もしました。その後に皆の働きぶりが違ってきましたよ。また、女性の更衣室が狭くて5か所に分散していたのですが、地下の機械室を合理化した時に、広いスペースが空いたので、そこにまとめて、明るいのびのびした更衣室を作りました。着物に着替えたりするのに、とても助かると感謝されましたが、従業員が幸せに働けなければ、良いホテルにはなりません。
    佐野:
     本当にそうですね。幸せで笑顔があるというのが、何よりホテルに印象を良いものにしますね。来週は台湾にご出張と伺いましたが。
    山田氏:
     うちのホテルが台湾にあるのですが、そこで、全国の JRホテルのプロモーションのイベントを開催します。今年は台湾ですが、タイでも開催したことがあります。
    タイで初めて開催した時に、四国JRホテルグループは人を出さない。タイから客は来ていないと言って参加しなかったのですが、お遍路さんの英語のパンフレットはあるのか、と聞いたら、あるということなので、「それを渡すから」と100部ほど貰って、自分の名刺と一緒にそのパンフレットを会場で手渡ししたら、その後、タイからの問い合わせが四国のホテルに続々とあって、どんどん決まってお客さんが来たそうです。四国JRホテルグループもすっかり驚いて、2回目からは「もちろん参加します!」ということになりました。エージェントの方に実際にどんなところか知ってもらうことはなによりも大切です。そして、リピーターを作ること。
    佐野:
     ホテルで、「暖かいふんわりした明るい印象」を持って帰ることができると、また、泊まりたくなるのですよね。不思議なものですね。
    山田氏:
     コーポレイトのお客様は特にそうですね。日銀会議のときには、メトロポリタン丸の内に地方銀行の頭取が何十人とお泊りになるのですが、なにも特別なことはしません。地元ではホテルの従業員が一列に並んで、ご挨拶をするというのがよくあることらしいのですが、うちのホテルでは、誰一人、特別なことはしません。「それがいいんだよ。うれしいね」と言ってもらっています。
    ヨーグルトを毎朝1番に食べる某知事さんがいて、それを知って、お好きな、ヨーグルトを冷蔵庫に銀のスプーンを添えて置いたら、それは喜んでくださって、「銀のスプーンでなくて、コンビニにあるスプーンでいいんだよ」と笑って言われました。えらい方は、それなりに細かいところにも気が付かれます。
    佐野:
     そうですよね。いいお話しですね。JR ホテルグループのブランド力は、「幸せな人に暖かく迎えてもらえ、気配りでさらに心が和む」と言ってよろしいでしょうか。
    山田氏:
     それと謙虚さは何より大切だと思います。「明るく前向きに、そして謙虚に!」というのがいつも私の提案しているモットーです。
    佐野:
     それは素晴らしい「哲学」ですね。ところで、お気に入りのホテルとかありますか。
    山田氏:
     エー!(笑)やっぱり、自分のやってきたホテルですかね。メトロポリタン(池袋)との付き合いは40年になります。メトロポリタンもエドモンドも建直しの計画があるように聞いていますが、古いホテルにはそれなりの風情があるので、それが個性で魅力です。それを踏まえて建て直しや改修を計画することがとても大切だと思います。良く行く飲食店についても、もう何十年と、同じメニューを中心に頑張っているところが好きですね。といっても、飯田橋の「おけい」と言うラーメン屋は好きでよく行くのですが、ちょっと前まではラーメンと餃子だけの店だったのですが、最近、タンメンと焼きそばを追加しましたね。(笑)おいしいですよ。
    佐野:
     エー!飯田橋には、協会の事務所があって、良く行くのですが、「おけい」は知りませんでした。早速行ってみます。ところで、ストレスがある時、その解消はどのようにしていらっしゃいますか?
    山田氏:
     ストレスはないね。今みたいに、しゃべっているのがストレス解消でしょうね。奥さんには、「会社に逃げる」と言われていました。(笑)ホテルは人間模様ですから、人と人とのつながりをそっと後ろから見守っている、そんななかでストレスは霧消します。
    佐野:
     本当にホテルマンですね。今日は山田さんのホテル人生にすっかり感動しました。ありがとうございました。あ!お孫さんが9歳のゴルファーとお聞きしましたが。
    山田氏:
     山田光之助と言い、沖縄に住んでいすのですが、10月に福島県で開催された、全国小中学生ゴルフ大会の低学年の部で優勝しました。この孫が世界で羽ばたくように、おじいちゃんも頑張らなくてはなりません。(笑)この前、習志野で開かれた、ZOZOマスターズチャンピオンの練習ラウンドを一緒に見に行ったのですが、外国の選手は子供には優しくて、サインはすぐにしてくれるし、GIVE AWAY のプレゼントを袋一杯持っていて、子供達にニコニコしながら渡してくれるのです。その暖かいもてなしぶりにすっかり感激しました。こんな暖かい楽しい雰囲気が日本のゴルフ界にも生まれるといいですね。
    佐野:
     本当に大切なホスピタリティですね。(スマホで光之助君の画像を見て)光之助君可愛いですね。山田さんも負けないよう頑張ってください。今日はホテル業について、いろいろ教えていただきました。ありがとうございました。
    インタビュー後記
     山田さんには、11月のインテリア部会セミナー「スノーホテル ryugonの挑戦」終了後のパーティで初めて親しくお話しさせて頂きましたが、山田さんの持つとびきりの明るさに深く印象付けられました。
    ホテル業では、現場は原因が人の行いであるなしに関わらず、お客様が不満だったら謝ってお客様の気持ちに寄り添うしかない。「そんな現場の不満を丸ごと受け止めるのが上司」と言い切るのはすごいですね。感動!それが JR ホテルのブランド力と納得しました。 佐野桃子



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